里山 フォトレポート シリーズ No,3



★下の写真をクリックすると拡大します。再度クリックすると、このページへ戻ります。★

山野を歩いていると、色鮮やかな赤い実を目にすることがよくある。秋の終わりから初春にかけては数多くの赤い実に出会うことができる。これらの中には、もちろん人が食べることのできるものもかなりある。野イチゴ類はその代表格である。私の撮影フィールド(徳島県美馬市脇町)の山野でも、木イチゴを含む何種類かの野イチゴが赤い実をつけている。その中でも特に、バライチゴ は深みのある甘い香りを持っている。野生種なので実のサイズは一定していないが、大きいものは10円硬貨を超えるくらいのものもある。

赤い実の中には、食用にはならないが非常に美しいものも多い。個人的な好みとしては、サルトリイバラ、サネカズラ、ヒヨドリジョウゴが気にいっている。サルトリイバラはオレンジ色から真紅の実の連なり方(わずかにサイズの異なる実がかもし出す遠近感)が美しい。サネカズラは別名(美男葛)とも言い、そのユニークな形が特徴で目にするたびにカメラを向けてしまうのだが何度撮影しても絵になる。ヒヨドリジョウゴはやや透明感で艶のあるオレンジに近い赤(朱色)の実をつける。ヒヨドリジョウゴという名前の語感も趣がある。ちなみにヒヨドリジョウゴの名はヒヨドリが好むことから付けられたという。しかしこの美しい実は有毒である。

緑色系統が多い自然の中では、このような赤色は周囲の色と補色関係になり よく目立つ。そして目立つことにより鳥や動物などに発見されやすくなる。つまりは彼らに食べられることを狙った植物の 種子散布戦略(繁殖戦略) の一種なのだ。この戦略には本来は もちろん人間も含まれていたのだろう。植物の持つ この戦略にはある種の、例えばナンテンの実のように微量の毒成分(アルカロイド)を含ませることにより一箇所での多食を抑制し速めに移動を促すことにより遠くまで種子を運ばせようとしているという説もある。

ところで植物に限らず、昆虫や動物においても赤色には特別な意味があるらしい。ニワトリの鶏冠の赤色や発情期の雌猿、の赤色などにも それらの生物の繁殖にかかわる信号的役割があるのではないかと考えられている。「裸のサル」や「人間動物園」などの著書で知られる デズモンド.モリスは、霊長類の配偶行動の考察の延長として女性の口紅の赤色にも背景には、こうした役割があるのではないかとも考えた。こうしてみると日頃 、何気なく目にしている自然界の赤色の背後に潜む神秘の泉は非常に深いようです。それとは別に私は、もっと単純に美しい赤色の実を視覚的に、そして時には味覚的に楽しみたいとも思うのである。

《植物たちの密かな戦略

他のコンテンツ情報、更新履歴については、こちらから

20060329 (LAST UP DATE 20061208)

( 掲載している植物名については、個人的判断によって記載しているので、必ずしも正確であるとは限りません。)

( 掲載している写真は全て、徳島県美馬市脇町にて撮影したもので構成しています。)

INDEXページへ戻る⇒⇒

★★★