うだつの町並み1978～1984(脇町)

徳島県美馬市脇町にあるうだつの町並みは、昭和６３年(１９８８年)に国の伝統的建造物群保存地区に選定された。これをきっかけとして、以前から住民の中にあった町並み景観保存運動の機運がさらに盛り上がり、傷んだ建物の修復や電線の地中化工事などが行われ、現在の美しい町並みが創り上げられた。そして今では多くの人々が訪れるようになった。

歳月の経過は不思議なもので、２０余年前に私がこの町並みを撮影した時には、あれほど不調和だと感じ、違和感を持った電柱や電線、広告看板、そして今ではすっかり見られなくなったメッキバンパーのフェンダーミラー車さえも時の流れの洗礼を受け、写真の中では郷愁を誘う風景の一部へと変貌させられてしまった。

以前のこの町並みの風情を知る者にとっては、今のあまりにもキレイすぎる町並みには少し違和感を感じてしまう。もちろんこれは無責任な部外者のノスタルジーであると言われれば否定はできない。しかし、町を訪れた観光客のブログの中に「はっきり言ってテーマパークである」という少しがっかりしたような表現があったことも事実である。

町並みの景観は長い時間をかけて出来上がってくるものである。現在の美しすぎる景観に何か足りないものがあるとすれば、それは歳月による熟成とでも言うものだろう。しかしこればかりはどうしようもない。ただひたすら待つしかない。そして、あと２０～３０年後に、もう一度この町並みを撮影してみたいと思ってしまうのである。但し、その時まで私自身が生きていればの話ではあるが．．．