里山 フォトレポート シリーズ No.4

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 イタチである。トマコとは徳島県の方言でイタチのこと。このトマコという言葉は愛媛を除く四国地方で広く使われている言葉らしい。仙波教授の阿波弁講座によるとイタチとトマコが別の動物だと思っている人もいたりしてなかなか面白い。
  このイタチ、そのかわいい顔に似合わず、かなり獰猛な肉食獣である。敏しょう性を生かして小さな昆虫類から鳥類、小型の哺乳類まで捕らえて食べる。
  私が子供の頃は、今のような大規模な専業の鶏卵農家はまだ無く、多くの農家では自家用のニワトリを飼っていた。卵は物価の優等生と言われることから分かるように当時、卵は貴重品であった。僅かな卵を買い集めるために仲買人が各農家を回ったりしていたのを覚えている。その卵を狙って大きなアオダイショウがやって来ることもあった。ニワトリ小屋の中で、産みたての卵を丸呑みにし胴体の一部分を異様に膨らませた姿を何度か見たような記憶がある。
  さらに厄介なのが卵だけでなくニワトリをも狙ってやって来るトマコ(イタチ)であった。スマートでスリムな体は当時の粗末な造りの小屋の隙間をいとも簡単に潜り抜けてしまう。そのため農家では、チャンとよば れる罠(トラバサミ)を仕掛けて駆除することもあった。
  現在ではトラバサミは禁止猟具とされ使用することは出来ない。更にイタチのメスを捕獲することも禁止されている。当時の法律などは判らないが、あの頃には チャンなどはみんな自由に 使っていた。なにしろ空気銃でさえ何故か無登録のモノ ( もちろん違法である ) が見られたような、そんな のどかな時代の話である。

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●田上地区の山道では、同じ場所で以前から何度かイタチを目撃していた。イタチは非常にすばしこく、出会 ってからカメラを構えたのでは間に合わないことが多く なかなか撮影は出来なかった。そこでその場所の手前からカメラを構えてゆっくりと歩いて行ったところ10メートル位先で道端の草むらがガサガサと動いているのを発見した。揺れる草の隙間から黒い背中が見えた。
  イノシシだった。雨上がりで湿った山道沿いの土を 掘り起こしてはミミズなどを探しているようで、まだこちらの存在には気付いていなかった。背中をそっと 2カット撮影したところでこちらの存在に気付いたらしく、ブフィと一声あげて側の草むらへ入って行った 。静かにはなったものの遠くまで逃げた気配は無い。どうやら近くでじっと潜んで私が立ち去るのを待つつもりらしい。それならばと、こちらもその場でじっとして再びイノシシが出てくるのを待つことにした。
  山道の真ん中でカメラを構えたままおよそ数分が経過した時、目の前に現れたのがこのイタチであった。私が あまりにも動かずに立っていたので気付かずにどんどんと近づいて来た。シャッターを切るたびにその音を気にしているようにも見えたがイタチの低い視線にはカメラの存在は映らなかったようだ。およそ4〜5メートルの 距離まで近づいた時、ふと見上げたイタチと目が合った。驚いたイタチはここでやっとこちらの存在に気付いたらしく、すばやく草むらへと姿を消してしまった。

(徳島県美馬市脇町東田上にて撮影 2006年7月12日)

★★★

●イタチ(ネコ目、 イタチ科 ) に含まれる哺乳類の総称であるが、一般的にイタチといえばニホンイタチおよ びチョウセンイタチをいうことが多い。両者には体長や体色などに違いがあるらしいが、イタチは雌雄によ る体長差が大きいことや季節による体毛色の変化などもあり、素人が区別するのは難しい。

(C) 2006 Satoru Fujimoto

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