里山 フォトレポート シリーズ No,7

卵のうは宇民さんの置いた瓦の裏側に固定される。

( 徳島県美馬市脇町東田上 )


 田上地区のカスミサンショウウオは1981年に棲息域の用水路を町が天然記念物としての指定をしたものの、その後の十数年間はその後の調査や周辺の環境整備などは一切行われていなかった。唯一、宇民さんが産卵期に時々見るという程度であったらしい。
 1997年には冬場の産卵期の確認個体数がわずか4匹にとどまり、例年より著しく減少しているという宇民さんの指摘をきっかけにして町教育委員会主導で棲息の実態調査が行われることになった。
 しかしここに来て、天然記念物に指定した当時の指定書の記述が曖昧で指定場所の特定が出来ず出鼻をくじかれた形になってしまった。

 1997年5月19日、町教育委員会はあらためて本格的調査に乗り出した。この日はサンショウウオを研究している愛媛の面河山岳博物館の岡山健仁主任学芸員に調査を依頼し、宇民さんの案内で町関係者ら十数人が調査したが産卵期を過ぎていることもあって個体の確認までには至らなかった。そして後日、岡山氏によって棲息域の水質検査結果を基にした詳細な報告書が出された。その報告書によると水質は良好であり、個人的判断であるとしながらも個体数減少との関連性は薄いという結果であったようだ。更に報告書は別種ではあるが、ホクリクサンショウウオの棲息地との水質の比較という方法をとっているのだが、それによると田上地区のほうが総アルカリ、硫酸イオン、硝酸イオンなど各種イオンの値がかなり高いという結果が出ていた。

宇民さんが1997年から記録している観察日誌

ふ化が近づいた卵のう。幼生の姿がはっきりと見える。

成長途中の幼生は首の左右にバランサーと呼ばれるヒゲ状突起を持っている。

産卵期に自宅裏の用水路を確認する宇民正儀さん

( 1997年5月20日  徳島新聞 )

【 カスミサンショウウオの個体数の減少 】

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産卵場所は宇民家のすぐ裏の用水路。この中に宇民さんが半円状の瓦を数箇所にわたって沈めてある。瓦の下は産卵場所であると共に親の隠れ場所にもなっている。